2022年度 札幌第三地域「企画型研修会」
2022年度 札幌第三地域「企画型研修会」
開催日 2023年5月1日(月)午後1時半~午後3時半
講師 四衢信 氏(智徳寺住職)
テーマ 「札幌の葬送の歴史を尋ねて」
会場 極楽寺本堂
参加人数 10名
参加寺院数 6ヶ寺
去る5月1日に極楽寺本堂において、札幌第三地域企画型研修会「札幌の葬送の歴史を尋ねて」が開催されました。
講師の四衢氏はお話しされるに当たって、「講義というよりも、一つの提言として聞いてもらえれば」と述べられ、資料等に依りながら札幌の葬送の変遷を概観し、そこから考えられる諸問題を共有するという形の研修となりました。
前半は智徳寺所蔵の葬送に関する昭和四年~昭和十年頃の貴重な写真資料と、札幌別院に残る昭和十一年の葬儀写真を元に葬送の変遷を尋ねました。資料からは、
①屋外での葬儀
②座棺
③遺族は白装束を着用
④棺桶を隠す装飾
⑤火葬場までの葬列
といった当時の葬儀式の特徴が見て取れました。その後も資料に依りながら、時代による葬儀式の変遷を確認することが出来ました。
後半は、同朋大学特任教授である蒲池勢至氏の「真宗と現代葬儀「葬儀」と「死」のゆくえ」(法藏館)に依りながら、葬儀の変化と現代葬儀についての課題が提起されました。蒲池氏によれば、年代による葬儀形態の変化は以下の通りです。(※蒲池氏自身は名古屋教区の住職であるため、調査対象も名古屋周辺が中心となっており全国的に一致するわけではない)
1,昭和三十年(一九五五)代までの葬場中心の葬儀
2、昭和四〇年(一九六五)代から六十年(一九八五)代までの自宅葬
3,平成元年(一九八九)以後の、葬儀会館での葬儀
蒲池氏による近年の葬送についての問題点を一つ挙げると、葬送において宗教的儀礼の意味が失われ、葬儀会社と顧客(遺族)間のニーズの合致に重きが置かれたことにより、葬儀が商品化されたことがありました。
また、興味深いお話しとして、昭和三十年代頃までの通夜は至って簡素なものであり、親族や近隣住民が集まって「正信偈」を上げて終いというのが一般的であったそうです(名古屋周辺の場合)。
通夜には僧侶が行く必要がなかったので、当然、通夜法話もありませんでした。その理由として四衢氏は、当時の名古屋周辺での葬儀をよく知る前札幌別院輪番の三浦崇氏(三重県出身)との談話を回想して、日頃お手継ぎの寺院へ通う人がほとんどであったため、あえて通夜で法話を聞く必要がなかったからだと述べられました。
以上のような内容を踏まえて四衢氏は、時代によって変化する葬送の形態は、現代においては特に「家制度の崩壊」に伴う先祖への憶念の希薄化という問題として迫っているのではないかと提示されました。そして、「葬儀は時代、社会によって必ず変化するものであるが、その中で何を形として残し伝えていくか、葬儀の持つ意味の深さをどのように捉えるかが大事である」と結びました。
一時間半に及ぶ提言を通して、葬送の本質の一端に触れることが出来たとともに、これから葬儀を執り行う上で大きな示唆を受けた研修会でした。
関係者各位に篤く御礼申し上げます。
(報告者:上島秀堂)